ジャズにあふれる横浜の2日間 「いいなあ」って感じてもらえたら、最高です
柴田:中田市長、きょうは楽しい話をたくさん聞けると思ってワクワクしています。よろしくお願いいたします。
市長:こちらこそ。駆けつけてくださったボランティアのみなさんのジャズにかける情熱を目の当たりにすれば、とても元気づけられると思っています。
bジャズを通じて横浜がどんどん好きになってきたのが、ここに集まった顔ぶれの共通項のような気がします。
市長:そうかもしれませんね。
柴田:ちょっと古い話ですが、小学校4年生の頃の社会科では横浜のことばかりやっていたのを覚えています。輸出額では神戸に負けているが、この製品の輸入額は横浜のほうが上だとか。そうした知識がけっこう子ども心を刺激したんでしょう。僕は社会の勉強で横浜大好き人間になりました。でも、自分の子どもを見ていると、社会科で横浜のことをあまり教えていないようです。郷土愛が薄いのはそのせいかもしれません。
市長:柴田さんは小学校の社会科の影響で、横浜大好き人間になっちゃったんですね。
柴田:ええ。物心がつくまえから横浜が大好きでしたから、横濱ジャズプロムナードや野毛の大道芸といった市民ボランティア参加のイベントには、しぜんと力を注いでしまいます。横濱ジャズプロムナードは約 350名の『ジャズクルー』と呼ばれるボランティアが協力してイベントを盛り上げてくれます。
市長:「ジャズクルー」って、ジャズが持っているかっこよさを象徴してますね。
柴田:おっしゃるとおり、洒落た呼び方ですよね。
なぜ横浜でジャズかと言うと、1925(大正14)年、横浜で日本最初のジャズコンサートが行なわれたのをきっかけに、ジャズのメッカと呼ばれるようになりました。終戦後は進駐軍や全国から集まったミュージシャンたちで活気づき、まさにジャズの街になっていった。ところが次第に、東京に活動の拠点を移すミュージシャンが増えて横浜は淋しくなっていきます。これではいけない、あの活気を再興しようじゃないか! それで11年前に始まったのが横濱ジャズプロムナードです。回を重ねるにつれて盛り上がりを見せて、いまや1,000人規模のミュージシャンが参加するイベントになりました。この数は日本一、いや世界一かもしれない。これは誇れることです。子どもからおじいちゃん、おばあちゃんまで「横浜の秋はジャズプロムナードだね」って言ってくれるようになると嬉しいですね。
市長:春はこれがあって、夏はこれがあってという中で、ジャズはまさに横浜の秋にぴったりですね。
横浜にジャズが浸透していった頃というのは、洋楽全般を「ジャズ」と言ってたんですね。そういう意味で横浜というまちには、早くから洋楽の入り口や受け皿があったと思います。それが横浜ジャズの原型で、そこからだんだん洗練された形のジャズが横濱ジャズプロムナードに受け継がれていると聞いています。そう考えると、このイベントには積み重ねられてきた歴史を感じますね。
柴田:じつは僕、小学生にジャズの楽しさを広めて「正しい横浜人」をつくりたいんです。
さらに飛躍しますと、ジャズに限らず、日本や世界から横浜に芸術家を呼び、奨学金のような制度をつくって、空いてる倉庫や工場をアトリエ、スタジオにしてもらって、安く泊まれて生活できる環境をつくって・・・しぜんと横浜に注目が集まり、そこから文化や歴史が育つことが夢なんです。
市長:僕も柴田さんと同じようなことを考えてるんです。現代アートの祭典であるトリエンナーレをやったり、いろいろなイベント開催を通じて模索してる最中なんですけどね。
まち全体に何か創造的な雰囲気があって、しかもその場所がイマジネーションを刺激する空間ということになると、そのまちの歴史が重要なんだと思うんです。横浜が日本におけるフロントランナーとしての創造性を持ってきたからこそ次から次へとヒトが流入し、350万人もの大都市になり、芸術を志す人たちは自分を高めたいと思って横浜をめざすようになればうれしいですね。
いまおっしゃった倉庫、工場の活用というアイデアはとても良い着眼だと思います。ただし倉庫は法律上、港湾施設の中における保管空間という位置づけでの使い方しかできないのが現状です。そうじゃない使い方もできるようにしていくことを、いま、すでに私どもも着手し始めています。今後に期待していただきたいと思います。
柴田:僕たちも横濱ジャズプロムナードを、ただの音楽イベントとはとらえていません。
観客もミュージシャンも、1年間溜めてきたものをここで出すんだ! というふうに考えて集まってくれます。横濱ジャズプロムナードを通じて日本のジャズを世界に発信したい、と思ってるんです。多い時で10カ国くらいからミュージシャンたちが来るんですが本当はもっと国際的にできたらいいなと思っています。
市長:柴田さんがおっしゃるように、横浜にジャズの季節がやって来て、一年待ちわびた人たちがいろいろなところから横浜へ集まって、音楽を楽しみながらふらっとまちを歩き、ドリンクを飲むというようなシーンっていいですね。したいですね、本当に。
柴田:これ、ジャズ専門誌に載せた広告なんですが「買物と食事だけじゃもったいない」というキャッチフレーズにしたんです。まさしく横浜を売り込もうというシティセールスの一環なんです。どこにいてもジャズを感じるまちにしたいですね。
市長:まちを歩いて、お店に入って、ジャズの雰囲気に包まれるまちづくりが我々の役割かもしれませんね。みんなで横浜全体を盛り上げていく。そんなまちづくりって、何かいいですね。
柴田:ふだん演歌をかけてるところもジャズを流したりね。
市長:『ああ、秋か・・・。ジャズの季節だな』って気付きますね。
柴田:街角から、ふとジャズが流れてくるとか。
片山:ジャズをBGMにしているところ、多いですよ。女性向きの飲食店でもジャズがかかっています。
田中:関西には「神戸ジャズストリート」というイベントがあります。オーソドックスなジャズ祭です。横濱ジャズプロムナードは前衛的でお膳立ての幅が広い。日本のジャズイベントでこういうスタイルを貫いているのは横浜だけ、世界的にも珍しいですよ。
柴田:いろいろな種類のジャズを全部横浜に集めて、自由なスタイルでやっているのが横濱ジャズプロムナードなんです。
市長:ジャズと一口に言いますが、どのくらい種類があるんですか?
柴田:8種類ぐらいかな。ディキシーランドジャズから、ラテン系のボサノバまで。とにかく幅が広いです。
市長:ジャズって、ある意味ではすごく狭い分野の音楽だって考えてる人がいっぱいいるような気がします。たとえばビアガーデンで騒ぎながら聴くような雰囲気のジャズもあれば、純粋に音楽として楽しんだり、BGMとして聴き流したり、スタイルは自由であっていいと思います。「ジャズを聴きに行く」っていうと、何か構える人たちがいるんですよね。
柴田:横濱ジャズプロムナードは、電車を降りると街角ライブの演奏が聴こえて、気持ちが高まってホールに急いだり!っていう気軽なイベントです。
市長:たまたま横浜に来た人が勝手に引き込まれたり、たまたま買物に来て巻き込まれたり。何となく、皆、仲間って感じのシーンが多いのも横濱ジャズプロムナードですね。
柴田:「プロムナード」の名前も開港記念会館や関内ホール、今回初めて会場になる大さん橋ホールまでぷらぷら歩いたり、歴史的な建造物などを眺めながら各会場を回ってほしい。そんな想いからつけられたんです。
市長:かなりの広範囲で開催されるイベントですしね。
柴田:2日間で約70会場ですから。12日(土)のランドマークホールは横浜特集です。横浜にちなんだミュージシャンと横浜の曲が大集合します。乞うご期待です!
市長:約350人の「ジャズクルー」代表の皆さんに聞いてもいいですか? ボランティアを始めて何年目になるんですか?
片山:11年目です。
市長:エッ、11年目! このイベントとともに歩んでいるわけですね。
片山:はい、ボランティアしながら自分も楽しんでいます。
市長:ご自身は、ゆっくり演奏を聴く時間なんかはあるのですか?
片山:流れてくるのを聴いているだけです。雰囲気がいいのでしぜんと耳に入ってくるので皆さんも楽しんでいるみたいです。
市長:もともとジャズはお好きだったんですか?
片山:ジャズのことはよく分からないです。ただ、音楽が好きで入って11年経ちました。
市長:音楽が嫌いな人はあまりいないと思いますけど、そういう意味ではジャズに狙いを定めて入ってこられなかった人もまわりにいっぱいいらっしゃるわけですね。(ジャズプロムナードのボランティア)やってるうちに好きになって、ハマっちゃった人もいらっしゃるわけですね。
片山:ボランティアの楽しさを知ってる方が、横濱ジャズプロムナードにたくさん集まる、という感じです。
市長:「あ、またここでも会った」というような感じで。
片山:はい。それで友達の輪がさらに広がって。
市長:ジャズプロムナードの11年間、具体的にどんなボランティアをしてこられました?
片山:会場のチケットのもぎりに始まり、ホールの裏方・表方、会場のアナウンス係もしたりで10年経ちました。本当にいろいろ体験できました。
市長:田中さんは何年目ですか?
田中:私は4年です。
市長:以前は関西におられたそうですね。
田中:はい。横浜にはジャズがよく似合うから将来、家を買うなら横浜、と決めていました!
市長:本当ですか。それはうれしい。
片山:家族で散策しながら、ジャズを聴く方も大勢いらっしゃいます。
市長:ジャズを狭い範疇でとらえている人がいますよ、ってさっき言ってから、ああ、自分のことなんだって気づきました(笑)。気楽に、散歩がてらにジャズを感じる、というようなスタイルで聴きに行きたいですね。ネクタイ締めて、タキシード着てという勝手な思い込みはちょっと置いといて。
市長、いいジャズクラブあるんですよ、とか、ジャズを聴きながら飲みましょう、なんて言われるのもうれしいですね。
片山:横浜には、雰囲気のいいジャズクラブがたくさんありますよ。
柴田:本当はこの対談も、雰囲気のいいジャズクラブでラフにやりたかったんです。
市長:ボーッと聴くのは好きなんですが、ジャズのことはあまり語れなくて。
柴田:語る必要はないんです(笑)。ジャズはね。
片山:私もただ聴いてるだけで。そして自分が「アッ、気分いいな」と思ったら、それでいいのかなと。
市長:それでいいんですね。
柴田:それでいいんです。
市長:じゃあ、横濱ジャズプロムナードの本番を楽しみにしてます。
全員:お待ちしています。ありがとうございました。