横濱ジャズプロムナード2010




横濱 JAZZ PROMENADE 2004 | スペシャル対談

jazzpro2004

・実施概要
・タイムテーブル
・出演者
・スペシャル対談
・データ



鬼武みゆき(ミュージシャン)鬼武 みゆき(ミュージシャン)

中田 宏(横浜市長)中田 宏(横浜市長)

柴田浩一(横浜ジャズ協会 常任理事)柴田 浩一(横浜ジャズ協会 常任理事)


秋です!
食欲、読書、旅行、
お楽しみがたくさんある季節。
横浜はジャズで、おもてなし!

■音楽を「演奏する・作曲するまち」としての横浜

中田 宏市長(以下中田):音楽を志したのはいつ頃?
鬼武みゆき(以下鬼武):横浜で暮らし始めた10代の頃ですね。
中田:一度就職して、働いてから、というのがユニークですね。
鬼武:大学卒業後すぐにプロの世界に入りたかったんですけど、まだ自信が持てなくてメーカーに就職して。音楽が好きだという気持ちは誰にも負けないと思っていたんですけど、自分の個性とか、やりたいものがはっきりとわかっていなかったから。それで4年くらいたった頃、あ、今ならできるって思って。そこからはもう、迷わずにきました。
中田:自分の好きなことと仕事、生活が成り立つ人はそうそういないと思うから、鬼武さんはすごいなあ。
鬼武:大変ですけれど、一応成り立っています。
コーディネーター柴田浩一(以下柴田):横浜って、音楽をやるには、どういうところですか?
鬼武:最近、仕事で旅に出ることが多いんです。旅先でもいろんなことを考えたり、インスピレーションを感じたりするんですけど、曲を作るのは横浜に戻ってきてからですね。
中田:それは市長としてうれしいことを聞きました。
今、文化芸術都市・横浜を作ろうっていっているんです。私の稚拙な表現では「真っ青な海が広がっていて、都市のアメニティーがありながら港を見たり、潮風を感じながら創作、クリエイティブ活動のできる環境が横浜」って言い続けているんですが、間違ってはいませんか?
鬼武:(笑)はい、間違いじゃないと思います。
中田:「クリエイティブな横浜」って、鬼武さんはどう思いますか?
鬼武:何かが生まれる時って、ちょっとした、何気ない日常的なシーンに生まれるものなので、それが私の場合は横浜なんです。刺激的なものをたくさん発してるまち、っていう気がします。
鬼武みゆき(ミュージシャン)中田:阿木曜子さんも同じことを言っていました。阿木さんが作ったヒット曲の詩にはとても多彩な言い回しや表現があって、相当考えたんだろうなって思うフレーズが一気にがーっと、ある瞬間出てくる。その場所が横浜だって。
鬼武:旅先から横浜に帰ってくると、とても落ち着きます。海がある、都会的な部分もある、といったバランスみたいなものが自分に影響してるんだろうなって思います。なんだか子守唄みたいな感じ、っていうのかな。空気とか全部含めて横浜のまち全体が。
柴田:演奏する場所としては、横浜はどう?
鬼武:自分の住んでるまちっていうのは他の地域とはどこか違いますよね。
柴田:ジャズプロムナード常連の板橋文夫さんが、毎年暮れにはコンサートを横浜でやりたいっていうんです。僕にはとても嬉しいことなんですけどね。
鬼武:やっぱり生まれ育ってきたまちだからって言う・・・。
柴田:板橋さんは栃木県の足利出身です(笑)が、どうしてもやりたいっていうんだよ。それはやっぱり横浜に魅力があるからなんだよね。
鬼武:うれしいですね。でもそういう感覚って、住んでると逆にわからないのかもしれませんね。

■ジャズを「発信するまち」としての横浜

柴田浩一(横浜ジャズ協会 常任理事)柴田:横浜はジャズだ、といつも言ってはいるんですが本当は逆に「では横浜のジャズって何」といわれると答えられない。
中田:僕も「ジャズって何だ?」っていう自問自答が昨年から始まっています。ジャズを聞きに行こうと友達に何度か誘われたんですが「ジャズがわからない」っていうリアクションだった。それを昨年、柴田さんが「それは違うよ」って指摘してくれてから、ジャズはメロディーでもタッチでもなく、まさに空間とか風景の中においてどうジャズがあるのかという感じがする。そう考えるようになりました。だから横浜という空間の中で味わえるジャズの楽しみ方そのものが「横浜ジャズ」という気はするんです。街角の風景、ジャズがある風景、その店におけるジャズの楽しみ方とか。そういうのが「横浜ジャズ」なんだと思いますね。
鬼武:すごい、その通りですよね。
柴田:上達が早いなあ(笑)。僕が教えられてる。
中田:365日、ジャズのことを考えていますから(笑)。
鬼武:ジャズってとても身近なものだから、横浜の人たち、その時に横浜に集まってくる人たちが、どこにいても聴けるような空間にしたいですよね。

■「ジャズがあふれるまち」としての横浜

中田 宏(横浜市長)中田:街角に彫刻が何気なくあるまちのように、どこにも音楽が流れてる、そういうことがつねにある横浜にしていきたいんです。その前に、そういう横浜を望む欲求をもっと高める必要がある。だからジャズプロムナードって大切だと思うんですよ。
柴田:10数年前に横浜ジャズ協会を作った時、「街中にジャズがあふれる横浜に戻したい」っていう想いで有志が集まったものですから、その気持ちはよくわかります。でもほら、今は焼き鳥屋でも居酒屋でもジャズが流れてるから、結構浸透したなーって気はするんですけどね。
あるシンポジウムで一緒だったサックスの中村誠一さんが、横浜市はジャズ専門のラジオ局を持つべきであり、ジャズミュージシャンを雇って楽団を作るべきだ、みたいな発言をしていました。これは夢ですけど、横浜が市営のジャズ・オーケストラをもってたらすごいなって。
中田:少しあいたドアの隙間からたまたま流れるジャズ。そしてジャズ・オーケストラ。フルセットであればなおいいですね。


■音楽の生まれた時代・生んだまちに目を向ける

鬼武:私、学生の頃はほとんど興味がなかったんですけど、最近、音楽の歴史を知るのって、とても大事なことなんだと思うようになりました。例えばクラシックだったらベートーベンとかモーツァルトとかチャイコフスキーとか色々な作曲家がいますけど、そういう人たちの音楽を学校の授業でたくさん流して、それぞれについてどう思うのかを話し合う時間がたくさんあったらいいと思うんですよね。そのディスカッションの中で音楽家が生まれ育った時代背景をのぞいていったりして、その人の作った音楽が見えてくるとか。そういう勉強だったら子どもは興味を持つと思うんですよね。
中田:入り口を間違っちゃってるっていう気分はありますね。音色を聴いて、そして曲調を聴いてその中で感動して、そのあとに曲名、作曲者の話をして、時代背景を知りたくなって、というような興味の持っていきかたがあるよね。その点、日本は順序が逆だと思います。
鬼武:そうですね。どこかのまちに初めて行って、その歴史や人をだんだんと知っていくっていうのと一緒だと思うんです、音楽との出会いって。街角でやってる音楽を耳にして、あ、これってなんだろう?って。演奏されているのがジャズだったとして、それがジャズの名曲だったりすると、その曲からいろいろな演奏家、楽器の音色に興味が広がっていく。それで次は、作曲家が演奏しているオリジナルの音を聴いてみたりして。とにかく、音楽と出会うきっかけをたくさん、横浜にあふれさせたい。
中田 宏(横浜市長)中田:それが横浜の子どもたちへの、一番の贈り物だと思う。音楽とか芸術を理屈で教えるところから始まるんじゃなく、まちの中からごく自然に聴こえてくる、そういう場所がいっぱい横浜のまちの中にある。そして、そのうち、あの音色はトランペットだ、ピアノっていいな、やってみたい、っていうふうになれば。
柴田:要するに興味を覚えるような対象をたくさん用意する、そういうことですね。
中田:まとまったじゃないですか~!(笑)

■様々なジャンルの音楽に親しむ

鬼武みゆき(ミュージシャン)鬼武:私、できるだけ小さいころから、もっともっと色々な国のリズムを学べると良いなと思うんですよね。アフリカ音楽とか、ブラジル音楽、タンゴ、フラメンコとか。理論を教えるってことじゃなく世界のいろいろな音楽を聴く時間がいっぱいあればって思うんです。
柴田:じゃあ、あえて聞くけど、邦楽は?
鬼武:邦楽ももちろん。
柴田:例えば太鼓とか、尺八とか。
鬼武:邦楽を「特別な音楽」ではなく聴けるといいですね。今、日本に住んでいてもね、特別なものなんですよね、邦楽って。聴きに行けば聴けるし、日本人だからとても身近なはずなんですけど、やっぱり遠い存在ですよね。
柴田:アフリカのリズムも結構だけど、日本の音 楽をもっと聴かせるといいな。
中田:吉田兄弟の津軽三味線、いいと思うんだけどね。あの二人の音楽から三味線に感心を寄せていくっていうのもいいね。
鬼武:そう、やっぱりどのジャンルの音楽でも、いいなと思ってそのルーツを探っていく、これが大切ですよね。今年のジャズプロムナードでも、きっとルーツを探ってみたくなるような、そんなジャズがたくさん聴けると思います。だから、ぜひたくさんの人たちに聴きに来てほしいですね。

■いろいろあるから「横浜ジャズ」なんです

柴田:今年、ジャズプロムナードのブッキングを始めたら応募がものすごく来たんです。明らかにジャズじゃないな、と思われる演奏家、グループもあるわけです。すべてOKしちゃうと100組近い数になっちゃうんです。「横濱ジャズプロムナードの音楽って何なの」って。ある程度チョイスしなくちゃいけないんじゃないかなって思いました。
中田:でもそれが、「横浜ジャズ」の始まりになるかもしれないね。
鬼武:そうですね。毎年ジャズプロムナードの季節になると、もう横浜中どこに行ってもいろんなジャズが聴ける、ジャズが聴きたくなる、それが「横浜ジャズ」ですね。
中田:そうです。秋です。秋と言えば食欲の秋。読書の秋。そして横浜ではジャズの秋。ぜひ、みなさん「横濱ジャズプロムナード」お楽しみください。

中田 宏 柴田浩一 鬼武 みゆき


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